冬場にダメージを受けやすい北海道の道路にとって、舗装の長寿命化は、コスト削減、安全性向上のために欠かせない大命題。現在、AIを使った舗装の点検・診断技術が注目を集めています。最先端技術を駆使して道路舗装の状態を診断し、予防保全に役立てるべく、企業や大学、国や自治体が連携して開発,試行が進められ、現在では,本格運用が始まっています。
AIを活用した舗装点検システム「HibiMiru(ヒビミル)」
AIを使った点検・診断は、従来の方法に比べ、大量のデータを迅速かつ精密に分析し、ひび割れや損傷箇所を的確に把握できることが大きなメリットです。路面の状態を速く自動的に評価,可視化し、データに基づいた計画的な維持管理により,道路の持続可能な運用をサポートします。
研究をしているのは、室蘭工業大学の浅田拓海准教授。
浅田准教授は、車載カメラと多様な画像解析,AI(深層学習および機械学習)を組み合わせた「道路空間測定システム」の開発を進め、老朽化が進む舗装の維持管理への実装,また,都市・交通ビッグデータとの融合によるさまざまな地域課題解決に取り組んでいます。
2018年度から開発を進めてきたAI舗装点検システム「HibiMiru(ヒビミル)」は,市販のアクションカメラとマルチモーダルAIにより,ひび割れ率,IRI(平坦性),わだち掘れ量,区画線剥離率などの指標を低コストかつ簡易に測定できます.2022年度には,道内の一般国道での大規模な実証実験が行われ,点検にかかるコストと作業人員が従来よりも7割低減できることが示されています.現在では,道内の一般国道や市町村道で実用化されています.2024年4月には,国土交通省の「点検支援技術性能カタログ」に掲載されたこともあり,全国からも注目されています.
重要な点は,点検の効率化ではなく,技術の応用やデータの活用とのこと.網羅的な点検データを用いた新たな舗装マネジメント手法の構築や,他のビッグデータと融合したサイクルルートや救急搬送路線の路面や景観などの評価,分析など,観光振興や地域医療に貢献する研究にも取り組んでいます。
詳しくは、下記の資料をご覧ください。
・国土交通省北海道開発局:積雪寒冷地における道路舗装の長寿命化と予防保全に関する検討委員会,報告資料(第3,4,5回)
・国土交通省道路局:点検支援技術性能カタログ概要(舗装)令和6年4月